|
晴生はロボットを専門とする新米エンジニアである。 |
今は子供向けロボットの試作品が出来上がったばかりだ。 |
春生はその試作品の様子を見るために家に連れて帰ることに |
なった。何も問題がなければ、喋って動くぬいぐるみとして売り |
出す計画になっていた。 |
しかし、そのロボット「ニャン太」は家に帰ったとたん態度が |
一変、注文が多いわがままなオジサンになってしまった。 |
「ふっ・・・。成功品のふりするのも疲れるゼイ、おいボウズ、酒 |
持ってきてくれや」 「・・・・!!?」 |
春生はニャン太の電源を切ろうとするが、動きが早く捕まえる |
ことができない。 |
ニャン太は春生を困らせたが、たまに、まるで父親のようなこと |
を言ったりもした。 |
晴生には、家族がひとりもいなかったので、ニャン太を見ていて |
もし父親がいたらこんなものなのかなと感じるようになっていた。 |
そんなことで10日が過ぎ、状況を報告すると、ロボット開発 |
グループは、プログラム修正するためすぐに、ニャン太を連れて |
来いと言う。 電車で旅行に行こうとニャン太にウソをつき、 |
春生はニャン太を施設に連れていった。 |
修正する時、賑やかだった毎日を思い返し、その手が止まるが |
他の研究員によって修正が実行されてしまう。 |
おとなしく、ロボットらしくなったニャン太を、春生は再び家で |
様子を見ることになる。家に帰ってため息をつくと、 |
「はあ〜っ。やっぱりつかれるわー。春生〜かたもんで!」 |
「え・・・?何・・・?今なんて言った?」 「はやく早く」 |
「性格修正されたんじゃなかったのか?」 |
「おいおい、そんなに簡単にオレを修正できると思っているのか |
普通のロボットじゃあるまいしさあ」 |
その後売りだされたロボットは、最初の計画通りの性格で、 |
試作品のようなロボットは、二度と生み出されることは無かった |
し、生み出すことも出来なかった。 |
ニャン太は、春生の家に今も住み続けて、オヤジぷりを発揮し |
ている。 「春生この前行けなかった電車旅行、いくぞ〜」 |